6月24日(火)からは第4章までの公開となります。 【未来精子】は書籍化されており、通信販売でお買い求めいだだけます。 詳細はホームページをご覧下さい。→ 最後までお付き合いいただきありがとうございました。 2008年6月22日 冬杜燈霧(ふゆもりとうむ) ![]() |
『未来精子』を発売開始!
詳細は右 → HPバナーよりお入り下さい。 ほとんどキャベツの肉野菜炒めに冷凍のうどんという夕食だったが、 神矢が残さずおいしそうに平らげたので、おれの機嫌はよくなった。 さっき、急に冷たくされたように感じたのは、単に気のせいだったのかもしれないと思い、 明日は佐々木のほかにも友達が来るらしい、と教えてやった。 「どんな人達ですか? 仕事とか、趣味とか……?」 まだタンクトップの上になにもはおらず、 就寝前のスポーツ選手のようにも見える神矢は、 おれに合わせて缶ビールを呑みながら、世間話の口調で尋ねた。 「明日会えそうなのは、元々は克也さんの友達だった連中かな。 麻雀を一緒にやって、おれとも親しくなったんだけどね。 みんな十年以上つきあってるから、まるで商売替えしたやつもいるよ。 出版関係から株屋に変わったり……。趣味は、麻雀は共通だけど、 あとはふつうにゴルフとか、野球観たりするんじゃないかな。 そんなに細かいことは知らない。酒好きが多いよ、おれの友達は…」 「ぼくのことは、どう紹介するつもりですか?」 「正直に、夜中の駅で知り合ったって言うと、ちょっとふつうじゃない感じだな。 まあ適当に言うよ。新しい仕事仲間ってことで…」 「そうですね。月曜日から仕事しましょう。明日は一日遊びましょうか」 「おれはおまえと会った時から、ずっと遊んでるよ。なにもしてないって意味だけどな。 明日はディズニーランドにでも行きたいって言うのか?」 「遊園地はあんまり興味ないですよ。詠二さん、好きなんですか?」 「嫌いじゃないな、行けば、けっこう楽しめるよ、おれは。スピード系の乗物が好きだから」 「それなら、つきあいましょうか?」 「いいよ、そこまでマニアじゃないよ。大体ああいう所は女づれのグループで行って、 きゃあきゃあ童心に返るのが面白いんだ。男二人で行きたくないよ」 「ハントするなら、男二人はいいんですけどね…。 映画は、何か面白そうなの、やってませんか?」 「映画か…。映画館なんて、何年も行ってないな、ビデオばっかり観てるから。 たまには映画館のでっかい画面を見るか。えーと、新聞に出てるよな」 おれは夕刊の週末映画案内のページをひらき、ゆっくり眺めた。 「…‥第二次大戦ものと、ホラーに、アクション。コメディもある…。 いろいろやってるけど、観たいやつ、あるか?」 「未来ものはありますか?」 「SF? そうだな、これがそんな感じかな。〔ポピー〕っての。 評に、近未来SFロマンス系って書いてある」 「ぼくはそれがいいです。詠二さんは?」 「何でもいいよ。どうせどれが面白いか、観てみないとわからないんだ。 SFは大画面に向いてるから、いいんじゃないか? でも、日曜は混んでるな」 「指定席で観ましょう。何時からですか?」 「朝いちはきついから、十二時からと、二時半からの、どっちかだな」 「十二時からにして、そのあと、ビリヤードかなんか、やりませんか?」 「いいね。おまえはうまそうだな、雰囲気的に……」 そんなことはない、とは言わずに、神矢は微笑した。 女受けがいい遊びはひととおり上手にこなしそうだ、とおれは思った。 神矢の顔と体つきが、八日前の朝、 初めて見たときの印象より、魅惑を増しているように感じられた。 「……誰かと遊ぶのは久し振りです。楽しみですよ…」温かく、友情をこめて、神矢は言った。 ・・・・・・・・・・ 小学校へ入ると、女の子はときおり無意識に頭をめぐらせ、〔仲間達〕の影を探した。 レム睡眠の夢の中に現れる〔仲間達〕は、人間とは限らず、 ぬいぐるみの動物やおぞましい化けものの姿をしていることもあったが、 それがかえって頼もしく思える、疑いの余地のない味方だった。 〔仲間達〕の代わりに、女の子は同性の友達をたくさん作り、 強さと賢さでいくつもの小グループに君臨した。 女の子は、日常の中に見え隠れする危険の匂いを鋭くかぎわけ、 本当に必要なとき以外は、自分の力を誇示するよりも抑えるほうが安全らしい、と悟った。 体を温めてくれる右手で友達と握手をしたが、 より良く体調を整えるのに役立つ冷たい左手は、 表面体温を自在に上げて、気づかれないように努めた。 乱暴でない男の子には、愛想よくふるまうこともできるようになり、 男の先生や父親との関係も良好に保っていた。 未来精子 第4章 了 三つのランキングに参加しています。 応援をお願いたします。 ![]() ![]() *私の小説[クイン・ジュノー(1)無心の誘惑者] の配信も開始いたしました。 ![]() |
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詳細は右 → HPバナーよりお入り下さい。 「…なんだよ、日本人的じゃないな…」 外国映画によくある『友情・挨拶のキス』か、と思い、 おれは意識して平穏な表情を保ち、ゆっくり身を起こした。 「もう少しパソコンの勉強をしようかな……。実家でときどきさわってたんですが、 やっぱりいろんな情報を取り出せるのは便利ですよね」 急におれに対する興味を失ったように呟き、神矢は小テーブルへ向かい、 すわってノート・パソコンをひらいた。 −なんだ、こいつの変わり身は…? もてあそばれていきなり捨てられたような感覚が起こり、おれは、むかっとした。 「まだ時間が早いんだよな……。呑みに行かないか?」 親しみを取り戻したい気分で誘ってみると、背中を向けたまま、 「雨が降ってるから、今日はもう外へ行きたくありません」と、あっさり断られた。 −わからないやつだ。照れてるようにも見えないし、実は気分屋だったのか? まくれ上がったTシャツを直し、文句をつけようかどうしようか、ためらった。 −チェッ、かってにしろ、だ。 ほうっておくことに決め、おれは神矢の部屋を出て、 わざとらしくていねいに境の襖をしめた。 −おれをなめてるんじゃないか? 必要なときだけ遊ぶ玩具のつもりか? いっそこっちから襲って、犯してやろうか。いやだめだ、おれには無理だな、 途中で萎えるに決まってる。抱けるのは女だけだ……。 危ない衝動を払って、おれは自分の部屋の椅子に腰をおろした。 −まあいい、ひとつ貸しにしといてやる……。明日は佐々木に会うのか。 あいつは元気そうだな。去年麻雀旅行した時は、三善と池脇が一緒だったんだよな。 あの二人にも大分会ってないけど、元気でやってるかな……。 神矢を気にする心理状態を変えようとして、 おれは自分の昔からの友達の顔を、順番に思い出そうとした。 −佐々木、三善、池脇……柳原、浅野……栗原、斉藤か。 おれが会社辞めたこと、その辺りには一応連絡しといたほうがいいかな。 そうしよう、まともな常識ある友人を、大事にしとかないとな。 しまっている襖をちらっと見てから、おれはLDKへ行き、 赤い椅子を電話の前に持ってきて、番号簿のチェックを始めた。 「…もしもし、緒方です。…あ、どうも、元気? …実はおれ、今月会社辞めたんで、 社のほうに電話もらってもいないって言っとこうと思ってさ…。 そう…うん…いや、大丈夫だよ、何とかなるから…。そっちは最近どう? …さっき克也さんと話したんだけどさ…ああ、やっぱり個展の連絡は受けてるのか… おれは明日行く予定なんだけど…五時過ぎかな、たぶん…。そう? じゃ、会えたら会おう…そうだな…うん、わかった、じゃあどうも。 ……もしもし? 緒方だけど…ああ、そうそう、久し振り…実はおれさ…」 続けて六、七人のナンバーにかけ、そのうち四人は本人がすぐつかまり、 三人が佐々木から連絡を受けていることがわかった。 「そうか、明日は三善や柳原にも会えそうなんだ…」 同じ説明を繰り返すのに飽きたので、 今夜の通話は終わりにし、おれは独りごとを呟いた。 −おれの友達を燎に紹介することになるのか。 あいつらには見抜けないだろうな、燎が怪物だってことは……。 かすかに不安な予感が胸をよぎったが、すぐに消え、おれは奥の部屋を振り返った。 「おい! なんか食べるなら、二人分作ってやるよ、どうする!?」 恩に着せる口調で怒鳴ると、はっきりと穏やかに、 「はい、お願いします」と応えが返った。 三つのランキングに参加しています。 応援をお願いたします。 ![]() ![]() *私の小説[クイン・ジュノー(1)無心の誘惑者] の配信も開始いたしました。 ![]() |
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詳細は右 → HPバナーよりお入り下さい。 「だったら離れろよ、おれは女の代わりにはならないんだから」 「気持ち悪いですか?」 「あたりまえだ」 「本当に? ほんとに、ぼくの手の感じが、すごくいやですか?」 「……まあ、そこまでいやじゃないけど、エスカレートされるのはいやだよ」 「子供の頃、プロレスごっことか柔道や相撲をやりませんでした?」 「そりゃ男なら誰でもやるだろ。おれは高校は柔道部で、 もう少しで関東大会まで行けるとこだったんだ」 「なんだ、それを早く言ってください」 神矢はパッと顔を輝かせ、いきなりおれの上半身をはがい締めにすると、 ぐっと体重をかけて畳に押し倒した。 「このヤロー…」 おれは両足を伸ばして神矢の片足にからみつけ、両腕を自由にしようともがいた。 十キロは体重差があるはずの細身の神矢は、 予想外に強い筋力でおれの両腕を封じ込め、なめらかな頬がおれの耳に押しつけられた。 「ぼくはこれでも格闘技は強いんですよ、特に寝技は…」 神矢は笑いを含んだ声で囁いた。 おれは、かっとし、本気の底力を出して右腕をふりほどき、 神矢の腰へまわして、ごろりと体勢を入れ換えた。 「どうだ、上になったらおれのほうがずっと有利だぞ…」 神矢の体におおいかぶさり、おれは優越感をたたえて言った。 「そうでもないです…」 おれの背中にまわされた神矢の手が脇腹へ移り、指がピアノを弾くように蠢いた。 「アハハ、反則だ、くすぐるのは…」 おれは身をよじって、神矢の上から転げ落ちるようにのがれた。 「敏感ですね…」 さっと神矢は起き直り、流れるような動きで再びおれの上になり、押さえこんだ。 しかし、おれも今度はすばやく全身にバネを効かせ、 神矢をはねのけ、優位な形に持ちこもうとした。 おれ達はもつれ合ったままごろごろと転がり、 壁にぶつかって、また反対へごろごろと戻った。 「…なにやりたいんだ、おまえは…小学生か?」 ちょうど布団の上に頭がきたので、おれは力を抜き、呼吸を整えながら言った。 「…接触欲求の解放ですよ…気持ちいいです、とっても……」 カクテルの甘い香りがする息を吐きながら、 神矢はおれを見おろし、紅潮した顔でほほえんだ。 「…なら、もう満足しただろ? 試合終了にしろよ…」 「…そうですね…」 神矢は同意し、おれに顔を近寄せると、 いかにも自然に唇の端に軽い口づけをして、すっと体をはなした。 三つのランキングに参加しています。 応援をお願いたします。 ![]() ![]() *私の小説[クイン・ジュノー(1)無心の誘惑者] の配信も開始いたしました。 ![]() |
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詳細は右 → HPバナーよりお入り下さい。 「なんだよ、石鹸の匂いだろ、変なこと言うなよ」 「詠二さんはきれい好きでいいですね。身だしなみが、いつもきちんとしてて……」 「それは皮肉か? おれのどこがきちんとしてるんだ?」 おれは、部屋着にしている衿まわりのゆるんだTシャツの裾をつまみ、苦笑した。 「お風呂のあとも、きちんとスラックスをはいてるじゃないですか。 トランクス一枚で歩きまわったりしないんですね」 「真夏は歩きまわるよ。もうそんな季節じゃないだろ? おれは寒がりのほうなんだ」 「今日はすいませんでした。わがまま言ったみたいで……」 「いまさらなに言ってんだよ、いいよ、もう。宏子のことはあきらめたから」 「でも、本当は一緒に泊まりたかったんでしょう?」 神矢は右手をすっと伸ばして、手のひらをおれの膝においた。 払いのけたほうがいい、という気持ちと、 そこまで過剰反応することもない、という気持ちがぶつかり、結局、気づかないふりをして、 「まあ、それはな……」と口の中であいまいに言った。 「最後に一緒に泊まったのは、いつなんですか?」 「あー、そうだな、二ヵ月、は経ってないけど、ひと月半ぐらい前だな」 「ぼくのほうが禁欲は長いですね。欲望を抑えるのって、つらいです、ほんとに。 どうしても接触欲求が高まってしまって……」 神矢の手が、おれの膝からふくらはぎをゆっくり撫でおろし、また膝へ上がった。 「……やめろよ、おれじゃ代わりにならないだろ? そんなにつらいんなら、風俗へ行ったらどうだ?そういえば、薬を買うって言わなかったか?」 「薬はやっぱり副作用とかありそうですし、 風俗の人は子供を欲しがらないから、ぼくにはだめです。 少しだけ、体にさわらせてください。落ち着くんです」 神矢は一瞬の動作でしなやかに起き上がり、左手でおれの肩をつかんだ。 おれはわずかに身を引いて、 「おい、言っただろ? おれは男同士はだめなんだって。 試したことあるけど、だめだったんだよ」と告白した。 「試したって、いつです?」 「二十二の時、ホスト・クラブでバイトしてたことがあるんだよ。 そこの先輩にやたら遊び好きなやつがいて、そいつの部屋で呑んでた時、誘われて、 好奇心で一回だけ、試したんだ。でも、結局おれはまともに立たなかったし、 痛いめにあうのもいやだったから、謝って逃げてきた。 だからおれはストレートで、女じゃないとだめなんだ」 「ぼくだって本当はだめですよ、女じゃないと…」 神矢は平気な顔で、にっこりした。 三つのランキングに参加しています。 応援をお願いたします。 ![]() ![]() *私の小説[クイン・ジュノー(1)無心の誘惑者] の配信も開始いたしました。 ![]() |
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